チェスの「アンパッサン」は、特定の状況でポーンが相手のポーンを取ることができる特殊なルールです。
アンパッサンできる特定の状況をまとめると以下のようになります。
- 相手のポーンが初期配置からまとめて2マス進み
- 自分のポーンの真横に着地した場合
- そのポーンの通過地点に自分のポーンを動かすと相手のポーンを取れる
文章だとやや分かりにくいと思うので、以下の図で再生ボタン(▶)や次へボタン(>)などを押しながら流れを確認してみてください。
白の3手目e5に対して黒がd5と返します。これにより、条件1「相手のポーンが初期配置からまとめて2マス進む」と条件2「自分のポーンの真横に着地」の両方を満たしました。
この場合、白のe5ポーンはd6へと進みながら黒のd5ポーンを取ることができます。これがアンパッサンというルールです。
ただし、「ポーンの動かし方」でも解説したようにポーンは斜め前に進むことでしか相手の駒を取れません。この場合、相手のポーンは斜め前に存在しませんが2マス動いたポーンの残像が残っておりその残像を取っているイメージだと理解しやすいでしょう。
「アンパッサン」とはフランス語で「通過の途中」や「通過しながら」という意味。かつてポーンが1マスずつしか進めなかった時代の名残ではないかとも言われているそう。
ここからはもう少しだけアンパッサンについて深堀します。最後には実際に駒を動かしてアンパッサンを実践できるようにしているので、試してみてください。
アンパッサンはしなくてもよい【義務?権利?】
アンパッサンは、条件を満たしたときに「ポーンを取ってもよい」というルールです。「ポーンを取らなければならない」ではありません。
なので、アンパッサンできる状況でも必ずしなければいけないわけではありません。あくまでも権利であって義務ではないので、状況に応じてプレイヤーが自身に有利だと思える応手を選択しましょう。
ただし、アンパッサンできるのは相手がポーンを2マス動かした直後のみです。仮にその後ポーンの位置関係が変わらなかったとしても、アンパッサンの権利は消失しているので注意しましょう。
1ターンが経過すると相手の残像が消えてしまう、とイメージするとわかりやすいでしょうか。
アンパッサンした方がいい状況の例
これは「マックスランゲアタック」という定跡から発生する黒ナイトを狙ったトラップです。
7手目の白ルークにより黒のナイトは逃げ先が無くなります。強引にナイトを守ろうとd5と指すと、アンパッサンテイクによりナイトをピンできるので、結局ナイトは助かりません。
マックスランゲアタックの詳細は以下から。
アンパッサンしない方がいい状況の例
これはアルビンカウンターギャンビットという有名な定石のスパスキーバリエーションという変化です。
黒番は4手目でアンパッサンしていますが、クイーン交換を強制されてしまいキャスリングの権利まで奪われています。
アンパッサンせずクイーンの道を開けていなければ防げたので、この場面では「アンパッサンしない方がいい」と言えます。
ちなみに、この状況での黒4手目の最善は無難にNc6でナイトを展開することです。
問題:駒を動かしてアンパッサンを体験してみよう
ここでは実際にチェスの駒を動かしてアンパッサンを体験してみましょう。
なお、駒は正解の位置にしか動かないようにしているので、失敗を恐れず安心して動かしてください。
アンパッサンを利用してチェック
f4のポーンを1歩前に進めるとスタートです。
アンパッサンで相手のポーンを取ることで自分のポーンが移動し、背後の白ルークによってチェックをかけつつクイーンに攻撃できました。
このように自分の駒を動かすことで背後のルークやクイーン、ビショップなどの利きを通して攻撃するテクニックを「ディスカバードアタック」と呼びます。
アンパッサンを利用してチェックメイト
アンパッサンを利用した3手でチェックメイトとなる問題です。やや難易度が高いですが頑張ってみてください。
クイーンをe4に動かしてチェックをかけるとスタートです。
答え:1.Qe4+ f5 2. exf6+ Kh6 3. Qh7#
非常に実践的な問題でしたが解けたでしょうか。最初は解けなくても全く問題ないので、サクサクと気軽に次へと進みましょう。
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